空色のキャンバスは,どうしたって40cm平方くらいでしかない。でも,空がキャンバスだったら。無限に続く言葉も,無限の広がりを持つ絵画も,描くことができる。
電子技術総合研究所の山本吉伸主任研究官と玉川大学工学部の椎尾一郎助教授のチームは,ワイヤレスペンで空中に文字や図形を描く「空気ペン」を開発した。空中で動かしたペンの軌跡を電子的に保存し,ヘッド・マウンテッド・ディスプレイを装着した者同士で,見ることができる。また,描いたものをウェブを介して空間的に移動させることもできる。
久しぶりに,感覚にずんと来たニュースでした(^_^)。たとえば,ヘッドマウントディスプレイを装着しながら街に出る。お店の前にはリアルタイムにお買い得品が書かれている。一度行ってみたかったが場所がわわかりづらい食堂は,事前に家で道案内情報を街中に書き込んであったのでそれをたどって行く。学校で仲間と会いたいがなかなか時間が合わないときも,いつも食堂に待ち合わせ場所と時間を書いておいて,それでおちあうようにしたり。ある芸術家は街中に,国会議事堂も都庁も国技館もバックグラウンドレイヤーにして,自分の一大芸術を描き続けている。それらはヘッドマウントディスプレイを外せばひとつも見えないし,広告は見たくないとかボタンでフィルタリングできたら,利用価値も高そうだ。
ウェアラブルは,リアルの世界をそのままに,そこにワイヤードを薄く被せてしまうような感じになるかもしれない。道を歩きながらボイス・メールを聴いて,街角でお店の場所を仮想スクリーンで検索,地図を表示させたり。そのワイヤードの薄さは,いつの間にかだんだんと厚みを帯び,リアルの風景を変えていく。空色のキャンバスではなく,青い空に,自らの意見を薄紅色のペンで書き留めるときが来る。空が青いのは,その時のため,かもしれない。
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